スタディツアーに込める思い
一杯の向こう側を、一緒に見に行く。
産地を歩き、作り手の話を聞き、自分の感覚で、一杯のお茶を知っていく。
写真に残る景色だけでなく、帰ってからのお茶を見る目が変わるような経験を。
私たちが大切にしていること
知っていることを、実感へ。
産地名が、自分の経験と結びつく。
お茶が育っている場所を歩く。風土や気候を感じる。作られているものを見て、生産者の話を聞く。その土地の食べ物を、その土地で味わう。
それらを重ねることで、茶葉だけを見ていたときには気づかなかった問いが生まれます。私たちが届けたいのは、一杯のお茶への理解につながる、そんな学びです。
一杯のお茶を深く知るために、僕たちは産地へ行く
土地・人・工程と、一杯をつなげる。
中国茶を知りたいと思ったとき、今はたくさんの情報に触れることができます。産地の映像も、製茶の解説も、手元の画面から見られるようになりました。
それでも僕は、その場所へ足を運ぶことを大切にしています。
映像や資料から学べることと、自分がその場所に立って初めて感じられることは、同じではないからです。

01産地の名前を、実感のある場所に変える
僕たちは日頃から、原産地や生産者を大切にしているとお伝えしています。その言葉を、単なる商品説明で終わらせたくありません。
お茶が育っている場所を歩く。風土や気候を感じる。作られているものを見て、生産者の話を聞く。その土地の食べ物を、その土地で味わう。
一つひとつは別の体験に見えるかもしれませんが、それらを重ねることで、茶葉だけを見ていたときには気づかなかった問いが生まれます。
どのような場所で、このお茶が作られているのか。作り手は何を大切にしているのか。自分が飲んで感じていたことは、現地で見たものとどうつながるのか。
産地名が、覚えた言葉ではなく、自分の経験と結びついた場所になっていきます。
02バイヤーとして、現場を知らずに進みたくない
僕はバイヤーという仕事をしています。そして、買い付ける立場の人は、産地を訪れるべきだと考えています。
商品を選ぶことは、目の前の香りや味だけで完結する仕事ではないと思うからです。
その場所で何が作られ、どんな環境があり、どのような人が関わっているのか。現場に触れることで、自分の選び方や判断を見直す機会が生まれます。
もちろん、一度訪れればすべてがわかるわけではありません。だからこそ、現地で確かめることを続ける必要があると思っています。
03私たちのスタディツアーで届けたいこと
私たちがスタディツアーを企画するときに考えるのは、訪問先をいくつ並べられるかだけではありません。
限られた時間の中で、何を見て、何に触れ、どのように理解を深めていただくか。そのつながりを大切にして、内容や順序を組み立てています。
写真に残る景色だけでなく、一杯のお茶を見る目が変わるような経験を持ち帰っていただきたい。
その土地を知ることで、いつものお茶が違って感じられる。私たちが届けたいのは、そんな学びです。
講師の言葉に、自分の経験があるということ
自分で見て、感じて、考えたことを言葉の土台に。
中国茶を人に伝える方には、機会があれば、ぜひ産地を訪れていただきたいと思っています。
知識を増やすためだけではありません。自分で見て、感じて、考えたことが、伝える言葉の土台になると考えているからです。

01情報を知っていることと、経験を話すこと
資料を読んで学んだ内容を、わかりやすく伝えることは大切です。SNSや映像も、知らなかった世界へ関心を広げる入口になります。
ただ、それらは基本的に、誰かが見たもの、誰かが選び、整理した情報です。
そこへ自分の経験が加わると、話せる内容が変わります。
何に驚いたのか。思っていたことと何が違ったのか。その場では理解できず、帰ってから考え続けていることは何か。
そうした話には、その人自身の問いがあります。僕は、その問いを含めて伝えることが、聞く方の理解を深める大切な方法だと思っています。
02見たことを誇るのではなく、相手の理解につなげる
産地へ行ったことがあるから、それだけで優れた講師になるわけではありません。
大切なのは、その経験を、目の前の方が理解できる言葉に変えることです。
自分には印象深かった出来事も、背景を知らない方には伝わりにくいかもしれません。何を知っていただくと、その一杯がもっと面白くなるのか。そこを考えて、話を組み立てる必要があります。
また、自分が見た一つの場面を、産地全体の話に広げないことも大切です。自分で見たこと、生産者から聞いたこと、自分が感じたことを分けて話す。その丁寧さも、講師の言葉を支えると思います。
03経験があると、次に学びたいことも変わる
現地へ行くことで、説明に使える話が増えるだけではありません。自分が何を理解していなかったのかにも気づきます。
その気づきが、次に読む資料や、次に飲むお茶への向き合い方を変えていきます。
僕自身も、経験を重ねるたびに、もっと知りたいことが生まれます。教える立場になっても、その循環は終わりません。
産地を訪れることは、講師としての話題を集める旅ではなく、自分の学びを深め、伝える言葉を育てる機会です。
そして、その経験が、次に中国茶へ出会う方の発見につながる。僕は、そこに大きな価値があると思っています。
スタディツアーの学びは、帰ってから自分の言葉にする
経験を振り返り、次の問いを見つける。
スタディツアーに参加された方に、ぜひ取り組んでいただきたいことがあります。
それは、体験したことを、自分の言葉でまとめることです。
立派な旅行記を書く必要はありません。誰かに見せる文章でなくても構いません。
何を見て、何を感じ、何を学んだのか。その経験を、自分の中で一度整理してみていただきたいのです。
01「楽しかった」の中身を、もう少し見つめてみる
産地を訪れると、初めて見るものや、印象に残る出来事がたくさんあります。旅が終わったときに、「楽しかった」「面白かった」と感じることも、もちろん大切です。
ただ、その言葉だけで終わらせるのは、少しもったいないと思います。
何が面白かったのでしょうか。どの場面で理解が深まったのでしょうか。反対に、説明を聞いても、まだよくわからなかったことはなかったでしょうか。
そこを少し掘り下げると、旅の記憶が、自分の学びとして残り始めます。
02行く前の自分と、帰ってきた自分を比べる
たとえば、次のような問いから書いてみてもよいと思います。
- 行く前は、どのように考えていたか。
- 現地で、何を見たり聞いたりしたか。
- 想像と違ったことは何か。
- これから、もっと確かめたいことは何か。
特に大切なのは、「思っていたことと違った」という気づきです。
知っているつもりだったことが、現地では違って見えた。その違いを言葉にすることで、自分の理解がどこで変わったのかがわかります。
わからないまま残ったことも、消す必要はありません。それは、次の学びにつながる問いです。
03写真に、自分の視点を添える
写真を見返すときにも、場所の名前だけでなく、「なぜ、この場面を残したかったのか」を添えてみてください。
景色を記録することと、その景色から何を感じたかを記録することは、違います。
また、生産者の説明と、自分の受け止め方は分けて残すと、後から振り返りやすくなります。誰かへ紹介するときにも、経験と解釈を混ぜずに伝えられます。
04経験を、自分の財産にするために
僕は、人生の中でとても価値があるものの一つは、経験だと思っています。
だからこそ、時間を使って訪れた場所での経験を、しっかり自分のものにしていただきたい。
短いメモでも、話した内容の録音でも構いません。自分の言葉に置き換える時間を、少し持ってみてください。
スタディツアーは、帰宅したら終わりではありません。そこで得た経験を整理し、日々のお茶や、次に誰かへ伝える言葉につなげていく。その時間にも、学びは続いています。
同じ産地へ、何度も行く理由
変わっていく自分の視点で、もう一度確かめる。
「一度行った場所なら、もう知っているのでは?」
そう思われることもあるかもしれません。
けれど僕は、一度行った場所へ二度行き、二度行った場所へ三度行くことにも、大きな意味があると考えています。
同じ場所を訪れても、そこから受け取れるものは、そのときの自分によって変わるからです。

01初めての訪問だから、見えるものがある
初めての産地では、目に入るものの多くが新鮮です。
景色も、作業も、作り手の話も、驚きや感動につながります。その最初の経験には、何にも代えがたい価値があります。
一方で、すべてを理解できるわけではありません。
まだ知識がつながっていなかったり、何に注目すればよいかわからなかったりして、十分に受け取れなかったものもあると思います。
それは失敗ではなく、その時点の自分が持ち帰れた学びです。
02二度目には、違う問いを持っていける
帰ってからお茶を飲み、学び、人と話す。その経験が増えると、前には気にならなかったことが気になり始めます。
もう一度あの場所を見たい。あの説明を、今なら少し違う角度から聞いてみたい。
そんな問いを持って再訪すると、最初は別々に見えていたものが、つながることがあります。
「これだから、あのときこう説明していたのか」
そのような理解は、初めて訪れたときの驚きとは違う、深い喜びになります。
03訪問回数より、何を受け取ったか
何度も行けば、自動的に詳しくなるわけではありません。
前に何を見て、何を考え、何がまだわからないのか。それを持たずに訪れれば、経験がつながらないこともあると思います。
だからこそ、前回の記録を振り返り、今回は何を確かめたいのかを考えることが大切です。
訪問回数を増やすこと自体が目的ではありません。その場所から、以前とは違うものを受け取れる自分になっているか。その変化を感じることにも、再訪の価値があります。
04産地を知ることは、自分の変化を知ること
僕が産地を訪れ続けるのは、一度で学び終えたとは思えないからです。
経験を重ねるほど、見えるものが増え、同時に、まだ知らないことにも気づきます。
同じ産地を歩きながら、自分の理解が深まったことを感じる。そして、次の問いを持ち帰る。
スタディツアーを、初めての出会いだけでなく、学びを重ねる機会としても楽しんでいただけたらうれしいです。
スタディツアーは、僕から中国茶への恩返しです
受け取った学びを、次に出会う人へ手渡す。
僕にとってスタディツアーは、訪問先をご案内するだけの仕事ではありません。
中国茶から学んできたことを、次の人へ手渡す取り組みです。
僕は中国茶を通じて、たくさんのことを教えてもらいました。その恩返しを、これからも形にしていきたい。その思いの一つが、スタディツアーです。
01自分が歩いてきた道から、伝えたいことを選ぶ
最初から、今のように中国茶を理解していたわけではありません。
知らないところから学び、産地を歩き、作り手の話を聞き、自分で感じる。その経験を重ねながら、少しずつ理解を深めてきました。
だからツアーを組むときには、自分が歩いてきた過程を振り返ります。
どの経験が理解につながったのか。何を見ることで、それまでの知識が結びついたのか。限られた時間でも、これだけは感じていただきたいことは何か。
訪問先を選ぶときも、日程を考えるときも、その問いを大切にしています。
02観光を否定するのではなく、学びを中心に置く
旅を楽しみ、景色を眺め、写真を撮ることにも、それぞれのよさがあります。
そのうえで、私たちのスタディツアーは、その場所を理解することを中心にしています。
茶畑の写真を撮ったら終わりではなく、そこで何が営まれ、目の前のお茶とどうつながっているのかを考える。作業を見学したら終わりではなく、見たことを自分の中の知識と結びつける。
楽しかったという思い出に加えて、帰ってからのお茶の見方に残るものを持ち帰っていただきたいのです。
03中国茶が好きな人に、現場へ近づく機会を
中国茶を好きになった方や、人に教えている方が、産地を訪れ、現場から学ぶ機会を持てること。
僕は、その機会をつくることにも、役割があると思っています。
自分が受け取ってきた学びを、自分の中だけで終わらせない。次の人が現場に触れ、自分の経験として理解していく。そのきっかけをつくりたいと考えています。
参加された方が、帰国後に自分の言葉でお茶を話してくださる。その先で、また誰かが中国茶に関心を持つ。そんなふうに、経験が次の出会いにつながっていけばうれしいです。
04一杯の向こう側を、一緒に見に行く
スタディツアーに込めているのは、短い日程の中で、多くの場所を回ることだけではありません。
何を感じ、何を理解し、その後にどうつなげていただくか。そこまでを考えながら、内容を組み立てています。
中国茶に教えてもらったことを、次の人へ返していく。
その思いを持ちながら、僕はこれからも産地を訪れ、学び、その経験を皆さんと分かち合っていきたいと思っています。